僕等が想像してた世界はこんなものではなかった。
退廃的で、排他的な思想の蔓延る、そんな唾を吐きたくなるような世界じゃない。
もっと幻想と妄想が入り混じった、理想論が叶っている世界。
そうじゃないのか。
違うのか。
「夢から醒めたら夢だけじゃなく、現実までもが終わっている。始まりは終わりで、終わりは終わりでしかない。錆び付いた脳で出せる答えはそれまで。数十億だった世界が数億、数千、数万、そして数人になり、やがては一人になるこの世界。」
譫言のように空に向かって呟いて、君はもう居ないのだ、隣に居た君は、と嘆いてみせた。
誰が見ている訳でもないのに。
まるで同情を請うように。
「信じたかった。…綺麗な世界を。始まりと終わりが美しく絡まり合って、解け合い、そして背中合わせにお互いを支え合う、そんな世界を。出来る事なら君と。」
自分の目の前を見据えた。
形を象るように視線を這わせる。
偶像を、虚像を、実像にしようとして。
淡いラブソングのような甘い嘘。
僕等が『僕等』として存在していた時に、君に囁いた、その言葉を自分にも。
「愛している、君が、此処に居て。僕が、それを…君を、見つめている。今、この瞬間。忘れてなどいない、だから君は…間違いなく存在している。」
この気持ちが在る限り。
死ぬ事も、失くなる事も、無いのだ。
気違いだ、変人だ、何と罵られようとも。
僕はこの世界を一人では生きやしない。
最低でも最高でも同じく、二人で生きていく。
分かち合えるのは君だけなのだ。
現世界を否定し、嘆く主張と、理想世界を語るロマンチシズムを理解してくれるのは。
「君だ。」
瞼を落として、また光を入れて、放った言葉は生きていた。
届けば良い。
灰色に染まった空気を切り裂いて、青空を見ようと厚い雲を押し込むみたく、言葉を上手く描こう。
僕等が想像してた世界はこんなものではなかった。
別ればかり繰り返して、出会う前に忘れ去られるような物悲しい世界じゃない。
たとえ繰り返したとしても、また訪れる出会いという春の調べを流す世界。
きっとそう。
違わない。
end.
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